「私、何のために生きているんだろう。」
貧血気味で弱々しく、毎日会社に行った。
会社に行っても答えなんて見つからなかった。
友達は居たし、会社の同僚とも仲は良かった。
今から思えば、私は自分の殻に閉じこもっていただけだったのだけれど、
当時は全く気がつかなかった。
私は狭い狭い世界の中で苦しんでいた。
自分の何かを変えたいと思いつつも、どこか一歩踏み出せなかった。
死にたいと思っても、自殺する勇気なんてなかった。
いつも何かのせいにしていた。
仕事が忙しいせい。
会社のせい。
恋愛のせい。
自分がブサイクなせい。
そんな自分にもう、うんざりだった。
それでも救いだったのは、私が「素直」だったこと。
友人に「自分に自信がない。」と打ち明けると、ウォーキングを勧められた。
家でクヨクヨ悩んでいるのが嫌で、アドバイス通り毎晩2時間のウォーキングをした。
とにかく、家に一人でいる時間が嫌だった。
ネットで調べて、近所のダンススクールに通い社交ダンスを習った。
会社の先輩に誘われ、週に一度テニススクールに通い始めた。
ダイエットのためにパーソナルトレーニングにも行った。
少しづつ自分を変えるために、私は行動し始めた。
「今まで自分がやったことない事をやろう。
そして少しでもスタイルに自信を持てるように努力しよう。」
フルートでも、音楽でも、絵画でもなく、とにかく運動することにした。
1ヶ月もするとウォーキングの効果はかなり現れた。
パーソナルトレーニングと合わせて行ったため、体に軸ができ、正しいフォームで歩いていたからだ。
単純ではあるが、確実に体が軽くなった。
友人に見せられた宮古島の写真。
それを見て、私も行こう!と長期休暇に一人で宮古島へ旅に出た。
「せっかく一人なんだから、なんでも楽しんだほうが得だわ♪」
やっとそう思えるようになった。
運動をすることによって、うつ状態だった私は自らの運を動かすことができたのだ。
親身になって話を聞いてくれた友人。
ぽんっと背中を押してもらったことが、とてもありがたかった。
「行きたいのなら行ってくれば!お金なんてなんとかなるよ!」
単純な私は、今まで行きたくてたまらなかったフランス、モナコ、ドバイに一人旅に行くことにした。
もちろんカメラを持って。
旅行のプランを練っている時が一番ワクワクした。
コートダジュールに行こう!
モナコのホテルでお茶しよう!
憧れのロワールの古城巡りをしに行こう!
ルーヴル美術館で本物のラファエロとダヴィンチを見よう!
どうせなら帰りにドバイで遊んでから帰ろう!
やりたいことが山ほどあることに気がついた。
たくさん写真を撮りたい!!
私はカメラを手に、フランスに飛んだ。
エミレーツ航空に乗りドバイ経由でニースについた。
ニースを拠点に、私は一人地図を見ながらバスでエズやモナコを訪れた。
道に迷ったら、その場で話しかけて道を尋ねた。
TGVからの車窓の景色はぶどう畑や満開のミモザ。
ロワールの古城は想像以上に美しかった。
初めて訪れたアラブの国。ドバイ。
アラブ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、アメリカ・・・
様々な人種が入り乱れる空港に驚いた。
砂漠の中にそびえ立つ高層ビル。
何もかもが、今まで見てきたものとスケールが違った。
この旅は楽しかったなんてもんじゃない!
とても新鮮だった。
「私はなんてちっぽけなことで悩んでいたんだろう。」
「世界はこんなにも広いんだ。」
当たり前のことに、やっと気がついた。
「私はやりたいことをやればいいんだ。」
少しづつそう思えるようになっていった。
「私はやりたいようにやっていい。
行きたいところに行っていい。
今の私にできることは何でもやっていい。」
誰にも遠慮せず、自分がやりたいと思うこと、楽しいと思うことを
我慢なんてしなくてもいいんだ。
会いたいと思う友達には、積極的に会いに行った。
ヘトヘトになるまで楽しんだ。
ああ!一人でもなんでも楽しめるんだ!
そう思えるようになった頃、私は一人の男性とお付き合いしていた。
その半年後、私は彼と結婚した。
[…] 【今の私ができるまで】第5話 […]