musée de la photo 002 「生きる」を教えてくれた友人 河村忠さま

2016年4月5日

私がパリに行く朝、成田空港に向かう途中に友人からLINEが来た。

「忠くん、昨夜21:57、亡くなったそうです。最後は眠るように逝ったそうです。今は笑ってるって。」

 

数時間後のフライト。お通夜も葬儀も行けない。

それなら一緒に風になってフランスに行こう。

一緒においしいものをお腹いっぱい食べて、絶景を見に行こうな。

電車の中で泣きながら、私は心の中で彼と約束した。

 

*****

 

 

 

岡山に若くて、ドライビングセンスのいいエイトが大好きな男の子がいる。

Twitterを介して友人たちから聞いていた。

彼は河村忠くん、24歳。

忠くんに初めて会ったのは、地元・岡山国際サーキットだった。

私と彼の共通点は

・エイトが大好きなこと

・岡山育ちだということ

同じクルマに乗っていて、そのクルマが大好き!というだけで友達になった。

ツイッターを通じて毎日のように「お疲れ!」「腹減ったよー!」など気軽な会話を繰り返していた。

「俺、子供のころ白血病で、癌が再発してて余命宣告されてるんです」

初めて会った時、彼はさらりとこう言った。

サーキットで走り、元気におしゃべりしている彼を見ていて信じられなかった。

忠くんのツイッターの自己紹介

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昨年末から体調を崩し、入院。

大好きだった愛車を信頼できる人に譲り、最期は本人の希望で自宅で過ごしていた。

本当に心からエイトが好きで、自分で整備して、生き生きとサーキットを走っていた。

4月4日、桜が満開の岡山で彼はご両親に見守られて息を引き取った。

 

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必ず水面に映るモンサンミッシェルの夕暮れを撮りたい!!

そう思い、モンサンミッシェルでは念のため2泊宿を取っていた。

夜から午前中にかけては雨、海辺ならではの強風。曇り。

昼間は晴れるものの、夕方になると曇り始める。

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水面は波立っていて全く映り込まない。

だめだ。こんなんじゃない。

1日目の夜は諦め、2日目の夜を待つことにした。

ホテルで日没を待ちながら、少しウトウトしていた私は窓から差し込む真っ赤な光にハッとした。

カーテンを開けると、空が真っ赤に染まっていた。

きたっ!!

慌ててカメラを掴んで急いで外に飛び出した。

ホテルから撮影スポットまではすぐ目の前。

昼間は強風だった風がぴたっと止み、空は最高の雲だった。

私はカメラを構えるのを忘れ、目の前に広がる世界に息を呑んだ。

「姐さん(私のハンドルネーム)、これすげーな!」

忠くんの声が聞こえた気がした。parisblog-70

すごいね。

生きているって、すごいね。

こんなに素晴らしい景色を見られるんだね。

 

***

 

帰国し、展示の前に実家岡山に帰省した。

岡山の友人と共に忠くんの弔問にお伺いするために。

お線香をあげて、ご両親からたくさんのお話をお伺いし、彼は本当に愛されていて、お父さん、お母さん、妹さんの事が大好きだったんだ、と感じた。

フォトブックを作っていたので、写真を紹介しながら

「この景色を見せてくれたのは、きっと忠くんです」

そう言って、ご両親に御礼を伝えた。

口にすると、涙が溢れた。

 

***

個展の初日に、朝一番で駆けつけてくださった河村家のご両親。

まさか来てくださるとは思わなくて、本当に驚いて、涙が出るほど嬉しかった。

そして作品を「これは忠との記念になる作品だから」とお求めくださったのも、本当に嬉しかった。

 

***

 

 

精一杯生きた忠くんに、私は生きていることの素晴らしさを教えてもらった。

この素晴らしい景色を見せてくれてありがとう。

私はこの写真をたくさんの人に見てほしい。

彼と共に見た景色を。

そして、生きているってこんなにも素晴らしいと伝えたい。

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